ifc.01~05 (2010/11/29~2010/12/3)
 
 
2010年12月3日(金) ifc.5 ~三位一体~

昨日は歴史小説で大学時代を思い出してしまったので、もう少しだけ関連したお話を。

西洋人は3という数字が好きで、父と子と聖霊の三位一体をはじめ、真・善・美や智・情・意など、西洋文化の考察には3が手掛かりになることが多いと、大学時代に西洋美術の教授がおっしゃっていました。その教授は美術史の講義の中で、フランス革命前後に活躍した3人のフランスを代表する画家を、ダヴィッド=意、アングル=智、ドラクロワ=情と簡潔明瞭に説明しましたが、なるほどよくその画の特徴と画家の性質を表した実に上手い表現だなと私は秘かに感動し、単なる一般教養の講義であったにも関わらず、今でもその講義の内容をよく憶えています。

ここからは私のイマジネーションの世界ですが、これを同時代の西洋音楽で考えれば、ドイツを代表する3人の作曲家は、ベートーヴェン=意、ブラームス=智、ワーグナー=情といったところかなと。さらにイメージは膨らみ西洋文化の枠を超え、私の好きな日本を代表する3人の歴史小説家は、吉川英治=意、司馬遼太郎=智、池波正太郎=情といったところかなぁと。

文化・芸術は人それぞれ受けとめ方や感じ方が異なり、だからこそ多様性の文化が生まれるわけですが、このような遊びを通じて他人と共感できたときは、その人がとても身近に感じられて何だか嬉しいものです。
 
2010年12月2日(木) ifc.4 ~歴史小説~

昨年暮れにNHKで放送された「坂の上の雲」(第1部)が再放送されていますね。(第2部)は今月5日(日)放送開始で、楽しみにしています。原作を読んだのは大学生の時でしたが、それまでに読んだどの司馬作品とも、またどの歴史小説とも違うこの小説に、最初は戸惑い、途中何度か立ち止まり、また引き返しながら、最後は夢中になって一気に読み切った思い出があります。

この小説の特徴は、徹底した時代考証と事実検証に裏打ちされた歴史の描写と、虚構の意識的な排除にあると思うのですが、小説が小説である所以をその虚構性に求めるとすれば、この作品は小説よりも寧ろ歴史書のようにも思えます。

何かの対談で、司馬遼太郎が最も好きな自分の作品を問われたとき、一つには絞れず「空海の風景」と「燃えよ剣」の二つを挙げていたと記憶していますが、その意味でこの2作品は全く対照的です。どちらも豊かなイマジネーションによって作品が成立している点で同じ「小説」のカテゴリーに属しますが、作家になる以前は新聞記者をしていた著者がそのジャーナリストのスタイルで徹底してリアリスティックに歴史を描いたのが前者であり、そこに小説家として虚構(物語)を存分に加えて歴史を描いたのが後者だと思います。

この分類では「坂の上の雲」や「翔ぶが如く」は前者に属し、「竜馬がゆく」や「国盗り物語」は後者に属しますが、実は「徹底した時代考証と事実検証に裏打ちされた歴史の描写」は双方に共通する司馬作品全般の特徴で、そこから虚構を極力排除することで描ける真実と、虚構を加えて初めて描ける真実とがあるのでしょう。蓋し、「歴史小説」の世界では、「歴史」と「小説」を「事実」と「虚構」の二項対立で捉えるのではなく、寧ろ相互補完的にひとつの真実に到るための同質性を有する手段として捉えるべきものと考えます。
 
2010年12月1日(水) ifc.3 ~電子申請~

今日は、東京国際フォーラム「電子政府オンライン申請体験フェア」へ行ってきました。
社団法人行政情報システム研究所主催で、様々な電子申請システムの説明が聞けて、実際にモデル体験もできるたいへん意欲的なフェアでした。

私は以下の手続きを体験してきました。
電子政府の総合窓口(e-Gov)、公的個人認証サービス、商業登記に基づく電子認証制度、登記・供託オンライン申請システム(かんたん証明書請求)、国税電子申告・納税システム(e-Tax)、地方税電子申告(eLTAX)、Pay-easy(ペイジー)

説明は総務省、法務省、国税庁等の省庁の方の他、日銀の方などもいらして、まさに国を挙げて電子申請を推進していこうという意気込みが感じられました。

電子申請を普及させるには、システムを導入する側と利用する側の双方にコストを上回るベネフィットがなければなりません。利用する側にとっては自宅や事務所や会社にいながら各種申請や納付等が行えるため、多くのベネフィットが得られるのは間違いないですが、一方でセキュリティを確保するために電子認証等の手続きやICカードリーダ等の機器購入が必要となる点や、単純にそれらの使い方がよくわからないといった点が、ある種の初期コスト(労力)の負担を感じさせる要因となっているように思います。

ですが、選択肢が増え便利になることは大歓迎です。あとはハード面の充実に合わせてソフト面をいかに充実させるか、24時間対応や手数料の割引、添付書類の省略やスピード決裁(決済)といった電子申請ならではの強みを生かしたサービスの充実が、今後の電子申請の認知・普及の進捗を大きく左右することになるでしょう。
 
2010年11月30日(火) ifc.2 ~知的資産~

今日は、大手町日経ホール「中小企業のための知的資産経営シンポジウム」へ行ってきました。
日本行政書士会連合会/東京都行政書士会共催のシンポジウムでしたが、基調講演・パネルディスカッション共にとても質が高く、たいへん有用なお話が聞けました。

「知的資産」という用語は「知的財産」と混同されますが、いわゆる「知財」は特許権、実用新案権、意匠権、商標権といった産業財産権や著作権等の無形の権利(知的財産権=知的所有権)を指すことが一般的で、これに無形の人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等を含めた広義の知的財産を「知的資産」と呼んでいると考えれば、大体間違いないかと思います。(ここで人材とは、個体としての有形の人間ではなく、無形の情報・スキル・ノウハウ等の集合体として捉えています。)

この知的資産は、企業(特に資金力等の弱い中小企業)にとっては非常に大きな強みとなります。なぜなら、知的資産は同時反復的に何度でも利用可能で、使えば使うほど知識や情報が蓄積され、ネットワークが拡大するほどベネフィットも拡大し、それでいて他社が容易に真似できないからです。

したがって、知的資産を活用した知的資産経営が、21世紀の企業の持続的発展と経済の活性化をもたらすのだ!というのが今日のシンポジウムの基本テーマであったわけですが、これは企業に限らず、寧ろ知的資産だけを頼りに生きる我々士業の専門家こそ、より戦略的な知的資産経営を心掛けねばならないと強く思いました。
 
2010年11月29日(月) ifc.1 ~温故知新~

先週の25日、NHKホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団のベートーヴェン交響曲第5番(「運命」)を聴きました。
何と言うか、こんな運命もあるんだなぁという感じです。

カンマーとは英語のチェンバー、日本語の室内の意とのことですが、ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルの演奏はアンサンブルが全体として室内楽のようにバランスよくまとまり、響きも心地よく、弦楽器を小編成にしている意図が明確に伝わってきました。

大編成のオーケストラではあそこまで自在に、かつ自然に(ここが大事です!)テンポを動かすことは困難でしょうし、ヤルヴィのベートーヴェンの表現に最も適したオーケストラの編成がカンマーオーケストラであるという解説になるほどなぁと納得しました。

古楽器も古い奏法も使わず、現代の楽器、現代の奏法、そして現代の解釈で、200年前のベートーヴェンの世界を見事に表現したヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルの演奏に、嬉しい驚きと感動を与えられました。
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